セルオン条項で誰にいくら入るのか

移籍の記事に「◯%のセルオン条項付き」と書かれていることがある。転売条項、再売却条項とも呼ばれる。仕組み自体は単純で、選手を売ったクラブが、その選手が次に売られたときに移籍金の一部を受け取る取り決めである。受け取るのはクラブであって選手ではない。払うのは、その選手を買ったクラブになる。

ただし、%が書いてあっても金額は決まらない。その%が何に掛かるのかが契約ごとに違うからである。次の移籍金の全額に掛かる契約もあれば、買ったクラブの利益、たとえば次の移籍金から自分が払った額を引いた残りにだけ掛かる契約もある。同じ「10%」でも、この二つでは受け取る額が変わる。しかも、何を利益と呼ぶかも契約が決めることなので、そこも一つに決まってはいない。

典型的なセルオン条項が動くのは、次の移籍が成立したときである。選手がそのクラブで契約を満了し、自由移籍で出ていけば移籍金が発生しないので、条項も何も生まない。何をもって発動とするかは契約の文言しだいなので、そこも一律ではない。

相場については、筆者は書かないことにしている。何%が普通だと言い切れるだけの、契約に基づいた資料を見つけられていないためである。代わりに、報道が具体的な数字を出した案件を見ていきたい。

なぜ元クラブのセルオンは禁止されないのか

考えてみると妙な話ではある。選手を手放したクラブが、なぜよそのクラブの売り上げに手を伸ばせるのか。ここはFIFAの規則がはっきり線を引いている。

選手の移籍を扱うFIFAの規則(2025年7月版)には、第18条の3(原文では18ter)という条文がある。クラブや選手が第三者とのあいだで、将来の移籍金の一部を受け取らせる契約を結ぶことを禁じる内容である。投資ファンドが選手の移籍金の取り分を買っていた慣行、いわゆるサードパーティ・オーナーシップを止めるための条文だ。禁止は2015年5月1日に発効した。それ以前の契約は原則として満了まで存続でき、延長はできない。ただし2015年1月1日から4月30日に結ばれた契約には、発効日から1年を超えられないという経過措置が置かれた。

ではセルオン条項はなぜ許されるのか。同じ規則の定義に答えがある。ここでいう「第三者」は、移籍する選手本人と、移籍させる二つのクラブと、その選手が過去に登録されていたクラブを除いた者、と定義されている。元クラブは定義の段階で第三者から外れている。だから元クラブが将来の取り分を持つことは、そもそも禁止の対象に入らない。

隣にもう一つ、第18条の2(原文では18bis)という条文がある。こちらは、相手クラブや第三者が、雇用と移籍に関する事項において、そのクラブの独立性や方針、チームのパフォーマンスに影響を及ぼす力を得るような契約を禁じている。元クラブが通常のセルオン権を持つこと自体は問題にならないが、その権利と引き換えに、売却先や売却の可否に関する判断へ影響を及ぼす仕組みを付けると、この条文に触れうる。取り分を持つことと、決定に関わることは、規則の上で切り分けられている。

総額に掛かるのか、利益に掛かるのか

金額を左右するのはここである。数字を入れると分かりやすい。

あるクラブが選手を€2,000万で売り、10%のセルオン条項を残したとする。買ったクラブが数年後にその選手を€7,000万で売った。総額に掛かる契約なら、元クラブが受け取るのは€7,000万の10%で€700万になる。利益に掛かる契約なら、€7,000万から買ったクラブが払った€2,000万を引いた€5,000万が対象になり、10%で€500万になる。同じ%で€200万の差が出る。

では実際の案件では、どちらなのかが読者に分かるのか。アトレティコ・デ・マドリードが払う側に回った例で確かめてみたい。

ロドリは2018年にビジャレアルからアトレティコへ移った。移籍金は€2,000万に変動分€500万と報じられている。ビジャレアルは将来の売却に対する取り分を残した。翌2019年、マンチェスター・シティがロドリの解除条項€7,000万を支払って引き抜いた。

ビジャレアルがこの移籍でおよそ€700万を受け取ったことは、複数の媒体が一致して報じている。ところが、その€700万の中身の説明が、媒体ごとに噛み合っていない。

媒体(いずれも2019年7月4日)€700万の内訳の説明
Goal(スペイン語版)利益の10%で€500万、これに育成分と連帯貢献金が約€200万
AS売却に伴う分が約€600万、育成に関する権利が約€75万
Plaza Deportiva契約により€7,000万の10%、つまり€700万

合計はどれもおよそ€700万に着地する。しかし、条項が総額に掛かるのか利益に掛かるのかという肝心の点で、GoalとPlaza Deportivaは正反対のことを書いている。ASは割合そのものには触れているが、何%なのかを数字で示さず、金額だけを分けている。少なくともGoalとPlaza Deportivaの説明は両立せず、ASの内訳もそのどちらとも一致しない。

アトレティコもビジャレアルも契約の中身を公表していない。筆者が探した範囲では、算定の基礎を示した一次資料は見つからなかった。つまり、これだけ具体的な数字が並んでいても、10%が何に掛かっていたのかは確定できない。

ここで、内訳の一部として出てくる連帯貢献金にも触れておきたい。これはFIFAの規則が定めているもので、対象となる移籍では、育成補償金を除いたその移籍の支払いの5%が、その選手を12歳から23歳までのあいだ育てたクラブへ、登録していた年数に応じて割り当てられる。16歳から23歳の各年には移籍金の0.5%ずつが対応する。ロドリの場合、11歳から17歳までアトレティコの下部組織におり、フィジカル面の評価から上のカテゴリーへ進むのが難しくなってビジャレアルへ移り、そこでプロになった。育てたクラブが一つではないので、この分も複数のクラブへ分かれる。

条項による取り分と、規則で決まっている支払いは、別々の理屈で動く。それが一つの数字にまとめて報じられると、%の意味は外からいっそう見えにくくなる。

サムの50%が1年たたずに現金へ変わるまで

2024年8月、アトレティコはサム・アゲオワをポルトへ売った。当時はサム・オモロディオンと表記されていた選手である。一部の英語媒体は、このときアトレティコが50%のセルオン条項を得たと書いた。

ポルト自身の説明は言葉が違う。ポルトは上場企業なので、重要な移籍については証券市場向けの公表文を出す。2024年8月23日の文書には、€1,500万で選手の競技登録権と経済的権利の50%を取得した、と書かれている。契約は2029年まで、解除条項は€1億。さらに、15%の経済的権利を€500万で買い増せる義務ではないオプションを二つ持つ、という条件が付いていた。

では、セルオン条項と経済的権利の持分は違うものなのか。どちらも「将来この選手が生む金の一部を、前のクラブが受け取る」という点では同じに見える。次の売却を待たずに現金化できるかどうかも、区別する基準にはならない。セルオン条項も、話がまとまれば手放せる。サウサンプトンは2007年にガレス・ベイルをトッテナムへ売った際、15%から25%と報じられる条項を付けたが、翌2008年、経営難のなかで約£150万とトッテナムの若手GK1名と引き換えにこれを放棄した。2013年にベイルがレアル・マドリードへ移ったとき、サウサンプトンが取り逃した額は£2,000万近いとみられている。

それでも、両者を同義語として扱うことはできない。FIFAの移籍システムでは、クラブが登録する支払いの種類として「セルオン(%を明記する)」が固定額や解除条項と並ぶ独立した項目になっている。一方でポルトが公表したのは、経済的権利の50%を取得し、残りを段階的に買い増せるという取引の形である。名前が同じように使われていても、契約に書かれているものが同じとは限らない。

ポルトはまず、最初の契約にあったオプションを使った。2025年5月、一つ目を行使して15%を€500万で取得し、6月30日付でポルトの保有は65%になった。同年7月には二つ目を行使してさらに15%を€500万で取得している。ここまでが当初の契約に書かれていた範囲で、ポルトの保有は80%になる。そのうえでポルトは、アトレティコに残っていた20%を€700万で追加取得することを、あらためて合意した。ここでポルトは100%を保有し、アトレティコの取り分は消えた。

ポルトがアトレティコへ支払う権利取得の対価は、€1,500万に€500万、€500万、€700万を足して、合計€3,200万になった。選手の売却益はクラブの決算に直接効くもので、UEFAの財務規則の指標にも影響し、状況によっては選手関連の支出の余地を広げる。

筆者は、これは構造としては良い取引だったと思う。持分を持ち続けるというのは、選手が伸びれば大きな見返りがある一方、期待した額で現金に変えられる保証はないという話でもある。解除条項が€1億で設定されていたとしても、その額を出す相手が現れる保証はどこにもない。不確かな取り分を、確定した金額に替えた判断そのものは理にかなっている。

ただ、ファンとしては惜しい。有望な若手は自分のチームで見たいし、持分を残しておけば、その選手が伸びていく過程を数字の上でもう少し長く一緒に追えたはずだった。取引として正しいことと、見たかったものが見られることは別である。

なお、サムは2026年2月9日のスポルティング戦で負傷し、翌日ポルトが右膝の前十字靭帯を損傷したと発表、2月18日に手術が成功したと伝えている。この出来事は、7カ月前の判断の答え合わせにはならない。決めた時点で手元にあったのは、確定した金額と、分からない将来だけである。

セルオンと紛らわしい三つの仕組み

移籍の記事には似た言葉が並ぶので、切り分けておきたい。

買い戻し条項は、売ったクラブが決められた額でその選手を買い戻せる権利である。セルオンが金を受け取る話なのに対して、買い戻しは選手を取り返す話で、向きが逆になる。両方が同じ契約に入っていることもある。

連帯貢献金と育成補償金は、契約ではなく規則で決まっている。前の章で見たとおり、連帯貢献金は対象となる移籍で12歳から23歳までの育成クラブへ配分される。育成補償金のほうは移籍金と連動せず、クラブの区分ごとに定められた育成費用と育成年数から計算される。発生するのは、初めてプロとして登録されるときや、23歳になる暦年の終わりまでに異なる協会のクラブへ移籍するときなどである。しかも、その後の移籍で受け取れるのは原則として直前のクラブだけで、そのクラブが実際に育成した期間の分に限られる。

アドオンは、同じ移籍のなかで条件が満たされたときに追加で払われる金である。次の売却を待つセルオンと違い、出場数やチームの成績で動く。アトレティコの実例を含めて、移籍金のアドオンについては別の記事で扱っている。

そしてこの記事で見たとおり、経済的権利の持分もセルオン条項と呼ばれることがある。呼び方の違いに引きずられるより、%が何に掛かるのか、どういう条件で終わらせられるのかを見たほうが早い。

報道の「◯%」を見たときに確かめること

ここまでを、記事を読むときの手順にまとめておきたい。

一つ目は、誰が受け取るのかである。前のクラブなのか、さらにその前のクラブなのか。複数のクラブがそれぞれ別の取り分を持っていることもある。

二つ目は、何に掛かるのかである。次の移籍金の全額なのか、買ったクラブの利益なのか。ここが書かれていない記事は多い。書かれていなければ、金額はまだ計算できないと考えたほうがいい。

三つ目は、いつ、どうやって終わるのかである。次の移籍を待つのか、あらかじめ決めた額で買い取られる道が用意されているのか。サムの件では、その道の一部が最初の契約に用意されていて、残りは後からの合意で決まった。

そして、報道が%しか書かないときも、書いてあるときも、その先は基本的に見えない。移籍契約の全文を一般に公表する義務が一律にあるわけではないからだ。条件が具体的に外から分かる機会は限られていて、上場クラブが市場向けに出す文書や、争いになって公開された裁定の記録に中身が載る場合などがある。情報そのものは存在していても、一般に見える形にはなっていない。ロドリの件のように、数字が三通りに割れたまま残ることもある。

参照元
  • FIFA 選手の地位と移籍に関する規則 2025年7月版 定義14、第18条の2(18bis)、第18条の3(18ter)、第20条、附属書4、附属書5
  • FC Porto 公式コミュニケ(証券市場向け)2024年8月23日、2025年5月5日、2025年7月11日
  • FC Porto 公式(サムの負傷に関する臨床報告 2026年2月10日、手術の発表 2026年2月18日)
  • Goal スペイン語版、AS、Plaza Deportiva(ロドリのマンチェスター・シティ移籍に伴うビジャレアルの受領額、いずれも2019年7月4日)
  • BBC、Sky Sports(ロドリの解除条項€7,000万の支払い、2019年7月)
  • The Guardian(サウサンプトンがベイルのセルオン条項を手放した経緯、2017年2月)
  • Atlético de Madrid 公式、Villarreal CF 公式(ロドリの下部組織在籍歴)
今日のチョリスモ実践
合計が一致していても、内訳まで一致しているとは限らない。同じ数字が並んでいるときほど、それがどういう理屈で出てきたのかを一度だけ疑ってみるといい。
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