🟥 85' E.ガルシア
試合概要
コパ・デル・レイ準決勝第1戦。アトレティコ・マドリードがホームでFCバルセロナを4-0で粉砕し、決勝進出に大きく前進した。得点はすべて前半に生まれた。7分にエリック・ガルシアのオウンゴール、14分にアントワーヌ・グリーズマン、33分にアデモラ・ルックマン、そして前半アディショナルタイム45+2分にフリアン・アルバレス。後半52分にパウ・クバルシが決めたかに見えたバルセロナのゴールはVARによって取り消され、85分にはエリック・ガルシアがレッドカードで退場。バルセロナにとって、コパ・デル・レイで前半に4点以上のビハインドを負ったのは1943年(レアル・マドリード戦で前半8-0、最終スコア11-1)以来の屈辱的記録となった。
シメオネの"プランテアミエント"──大一番で繰り返される電撃的立ち上がり
Into the Calderón のフィル・キトロミリデス(Phil Kitromilides)をはじめ、複数の評論家が注目したのはシメオネの試合設計、スペイン語で言うplanteamiento(プランテアミエント=試合の入り方・構え方)の完成度だった。
シメオネ率いるアトレティコは、大一番でたびたび立ち上がりから相手を飲み込んできた歴史がある。昨季コパ・デル・レイ準決勝第1戦のモンジュイックでは開始6分で2-0(最終的に4-4)、2020年のチャンピオンズリーグ・ラウンド16リバプール戦では4分にサウール・ニゲスがゴール、2018年UEFAスーパーカップではディエゴ・コスタが開始1分以内にネットを揺らした。Into the Calderonは「4-0のスコアで34%しかボールを保持しない勝利を実現できるのは、たった一人の監督が率いる、たった一つのクラブだけだ」と書いている。
今回も4-4-2で臨んだシメオネは、ルックマンとジュリアーノ・シメオネという両翼のスピードを活かし、フリックの高いディフェンスラインの裏を徹底的に突く設計を施した。Total Football Analysisの戦術分析では、「アトレティコはこの試合に全てのリソースを集中させていた。リーグ優勝争いから距離があり、チャンピオンズリーグでも本命視されていない状況で、コパが今季最大の希望であることを彼らは理解していた」と指摘されている。
試合後、シメオネ自身もこう語った。
「スタジアムに信じられないエネルギーを見つけた。人生はエネルギーだ。そのエネルギーの波に乗ることができた。4人のアタッカー──ジュリアーノ、フリアン、アントワーヌ、ルックマン──が相手の残すスペースを素晴らしく解釈してくれた。この試合はこの先何が起ころうと記憶に残るだろう」
フリアン・アルバレス──64日間の沈黙を破った"蜘蛛"の一撃
この試合最大のストーリーラインは、フリアン・アルバレスのゴール干ばつ終結だった。12月9日のセビージャ戦(PK)以来、実に65日間・11試合にわたって無得点だったアルバレスが、コパ準決勝という最高の舞台で目を覚ました。
Marca紙は「アルバレスの長期にわたるゴール干ばつはアトレティコ内部で懸念材料になっていたが、ついにその連鎖が断ち切られた」と報じた。Goal.comは干ばつ期間中、バルセロナやプレミアリーグ復帰を含む移籍の噂まで浮上していたことを伝えている。
33分、アルバレスはルックマンへのワンタッチフリックで3点目をアシスト。シメオネが試合後に「フリアンからルックマンへのパスが大好きだった。あの瞬間の冷静さ。謙虚さ、ヒエラルキー、ビジュアライゼーション……人生は返してくれるものだ」と語ったこのプレーは、得点だけでなくチームメイトを活かす視野の広さを示すものだった。
そして45+2分、ムッソのゴールキックからモリーナが右サイドを駆け上がってルックマンにつなぎ、ルックマンの折り返しをペナルティーエリア手前から強烈なファーストタッチのシュートで決めたアルバレスの4点目。ESPNのアレックス・カークランド記者によれば、シメオネは次のようにコメントした。
「ゴールを決めることは彼の持っている力だ。神に感謝する。彼には本当にこのゴールが必要だった。間違いなくこの先に向けて彼をクリアにしてくれるだろう」
マンチェスター・シティ時代の評価を裏付けるパフォーマンスであり、チーム全体の自信サイクルの起点になる可能性がある。Into the Calderónは「本当にエリートなストライカーは、干ばつを終わらせるのに尻に当たったラッキーゴールなど必要としない。カップ準決勝でペナルティーエリア外からの強烈な一撃を放つのだ」と書いている。ただし同時に、「ここからまた2ヶ月得点がなければ意味がない」と釘も刺している。
グリーズマン──ワンタッチの魔術師、レジェンドの夜
グリーズマンのワンタッチパスによるテンポ支配は、この試合の美しさの核心だった。
Yahoo Sportsの評価記事では「フリックの指導するチームを手玉に取る、ヴィンテージのグリーズマンが戻ってきた」と表現された。14分のゴールは、ムッソのロングキック→ルックマン経由で右サイドに展開された流れからモリーナのスルーパスを受け、体を開いてゴール左隅に流し込んだもの。Into the Calderónは8点の高評価を付けている。
シメオネは試合後、グリーズマンについて特別な言葉を選んだ。
「アントワーヌは歴史的な選手だ。アトレティコ・デ・マドリードのレジェンドだ。彼が持っているあの素晴らしい場所は、誰にも奪えない。彼は貢献するために全てを与えている。監督として、彼が伝えてくれる情熱を返してやりたい。今日は圧倒的だった」
短いタッチでスペースを創出し、アルバレスやルックマンの動きを引き出す──いわば攻撃全体のテンポを"指揮"する役割を、グリーズマンはこの夜完璧にこなした。
ナウエル・モリーナ──右サイドの"モーターオイル"と、ピッチの悪戯
モリーナのロブスルーパスでハイラインの裏を突く精度、そして地上プレーでの不安定さ。この二面性は今回の試合でもはっきり現れた。
Yahoo Sports(Into the Calderón寄稿)のプレーヤー評価ではモリーナを8点と高く評価した上でこう記している。「チームの攻撃が機械だとすれば、モリーナはそのモーターオイルだ。右サイドを何度も駆け上がり、カーブのかかったパスを送り、バルセロナのハイラインを最大限に利用した」。一方で同記事は、メトロポリターノの芝生状態が悪く、モリーナが何度もスリップしたことをユーモラスに描写している。「モリーナの靴を確認してほしい。ビーチサンダルでプレーしていたのではないか」と。
地上プレーの不安定さには、このピッチコンディションの影響が大きかった可能性がある。2点目のグリーズマンのゴールへのアシストは、彼の試合理解力の高さを証明するプレーだった。シメオネも「モリーナがどれだけトレーニングし、働き、チームメイトを鼓舞しているか見てほしい。今日のモリーナは自分がプレーしたい試合をプレーできた」と讃えている。
ルッジェーリ vs ラミン・ヤマル──評価の分かれる功罪
この試合で最も評価が割れるのがルッジェーリのパフォーマンスだ。
多くのメディアはルッジェーリを今節のハイライトの一つとして評価している。Into the Calderónは8点を付け、「常に動き回るヤマルを抑える任務を負い、ルッジェーリは若きアタッカーが試合の主導権を握ることを許さなかった。計算されたコンテインメントとボール奪取のプレスが、バルセロナの最大武器を封じ込めた」と書いた。BBCのデータによればヤマルの平均評価はわずか4.14、ボール喪失は29回にのぼった。試合後、ルッジェーリ自身がInstagramでヤマルのスタッツを投稿し、「止めるのは不可能だと言われていた……だがフットボールは仕事と集中力だ」とキャプションを付けてSNS上で大きな反響を呼んだ。
ただし、筆者としてはメディアの高評価に全面同意というよりも、"功罪の両面"をきちんと見ておくべきだと考えている。Into the Calderón自身も認めている通り、後半開始直後のルッジェーリの不用意なバックヒールが、バルセロナの取り消されたゴール(クバルシの52分のシュート)につながった。VARがなければ失点に直結していたプレーだ。対ヤマルの守備という主要タスクでは高い評価に値するが、ビルドアップ時の判断ミスというリスク要素が残る──この複合的な視点が、今後の上位対戦を見据える上で重要だろう。
マルコス・ジョレンテ──万能戦士の静かな支配
ジョレンテの中盤での万能性は、この試合の土台を支えた。
Yahoo Sportsのレーティング記事は8点を付けた上でこう書いている。「本職のミッドフィルダーとして、ジョレンテはボールの両端で活力に満ちていた。驚異的なスタミナがボックス・トゥ・ボックスでの浮遊を可能にした。9回のボール回収と3回のクリアでナイトを終えた」。
シメオネは「マルコスがバリオスの穴を非常によく埋めてくれた。あらゆるものを破壊してくれた」と評価している。本来はバリオスがこのポジションに入るべきところ、ジョレンテが完璧に代役を果たしたことは、チームの層の厚さを示している。
バルセロナ視点──フリックのハイラインは限界に達したのか
試合後に起きた最も重要な動きは、バルセロナの選手たちがフリックの戦術について懸念を直接伝えたという報道だった。The Athletic(NYT系列)によれば、翌日のトレーニング前にフリックの話を聞いた選手たちは、いくつかの戦術的懸念を口にした。
選手側の主張はこうだ。メトロポリターノのような環境では強度の高いプレスとハイラインは機能しにくいと感じていた。これはクラブ・ブルッヘ戦(3-3)やセビージャ戦(1-4)でも同じ問題が露呈していた。さらに、ラフィーニャとペドリの不在時にフリック戦術を高精度で実行するのは極めて困難であるとも訴えたという。
重要なのは、選手たちがフリックの戦術を「全面的に放棄する」ことを望んでいるのではなく、大一番ではよりプラグマティックなアプローチを採用してほしいと要望している点だ。
フリック自身は試合後の会見で率直にこう語っている。
「チームとしてプレーできなかった。そうプレーしなければ、良いプレーはできない。プレスが足りなかった。時にはこのようなレッスンを受けることが良いこともある」
「失望しているかと聞かれたら、それは正しくないかもしれない。今季のこの選手たちを誇りに思っている。怪我もあった。それも試合の一部だ。ウェイクアップコールだった」
今後の課題──2つの問い
1. 同じスタメンでこのパフォーマンスを再現できるか?
Into the Calderónのコラムニストも「アルバレスのゴールはこの先を浄化してくれるだろうが、ここからまた2ヶ月沈黙すれば何の意味もない」と警鐘を鳴らしている。再現性の鍵は、ルックマンとアルバレスの連携がこの試合だけの化学反応だったのか、それとも継続可能なコンビネーションなのかにかかっている。次のブルッヘ戦(チャンピオンズリーグ・プレーオフ)が最初の試金石となる。
2. 守備的な相手(5-4-1ローブロック)をどう崩すか?
4-0のスコアが可能だったのは、バルセロナがハイラインを採用し、裏のスペースを提供してくれたからこそだ。引いて守る相手にはこの戦術は通用しない。筆者としては、グリーズマンのワンタッチパスだけでは密集した守備を崩すには不十分であり、サイドからのクロス精度、セットプレーの質、ミドルシュートの意識といったチーム全体の構造的課題として取り組む必要があると考えている。